●毎年の新入社員を一括りにしたくない
僕は新入社員の研修を毎年3か月、集中してやっているので、例年、「今年の新入社員はどうですか?」と同僚に聞かれる。
この質問が困るのだ。
毎年、毎年、入ってくる新入社員に「大差」はないのが、本音だ。
やれ、「ゆとり世代」だ、やれ「氷河期世代」だ、というレッテルを貼るのが好きな人もいるが、ほとんど、毎年、差がない。
世代間の差よりも、個人間の差のほうが100万倍もある。
毎年、「日本生産本部」が「今年の新人は●●型」ですと発表する。
それも、その頃、流行している言葉や売れている品物の名前がついたりする。
たとえば、下記の「ロボット掃除機型」とか「自動ブレーキ型」を見て欲しい。
その年に入社してくる新人が、毎年、都合よく、その年に流行しているものに分類されるというのが、あまりに安直だ。
人間のタイプなんて1万年前から千差万別なのだ。
だから、今年は僕に聞かないないでね、「今年の新人はどうですか?」と。
「例年どおりですね」としか答えようがないのだから。
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平成25年度・・・■ロボット掃除機型
一見どれも均一的で区別がつきにくいが、部屋の隅々まで効率的に動き回り家事など時間の短縮に役立つ(就職活動期間が2か月短縮されたなかで、効率よく会社訪問をすることが求められた)。
しかし段差(プレッシャー)に弱く、たまに行方不明になったり、裏返しになってもがき続けたりすることもある。
能力を発揮させるには環境整備(職場のフォローや丁寧な育成)が必要。
ロボット掃除機とは自走式の掃除機の総称である。
様々なプログラミングに従って自分で動き回り、時間がくると自動的に動き始め、掃除が済むと自分で充電装置にドッキングする機能もあったりする。
機械とはいいながら、その動きはどこか人間的で愛嬌がある。
いかにも「頑張って仕事しています」といったニュアンスの動きをする。
また、使っているうちには奇妙な行動を見ることもある。
多くの人が経験するのが行方不明である。たいていはソファーの陰やベッドの下で立ち往生しているのだが、時には段差から転落して、裏返しになった亀のようにもがいていたりする。
活用するためには、ある程度、部屋が片づいていることが必要で、雑然とした環境では能力を発揮しにくい。
新卒新入社員を採用した企業にあっては、育成のための研修プログラムを工夫する、組織として最初からプレッシャーを与えずコミュニケーションに配慮する、新入社員を孤立させないなど、職場として受け入れ環境を整え新人を育成していって欲しい。
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平成26年度 新入社員のタイプは「自動ブレーキ型」
平成26年度 新入社員のタイプについて
知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。
何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。
どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要。
○「自動ブレーキ型」について
自動車のCMでよく見るようになった自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装置。高感度センサーで障害物を敏感に検知して自動的に車を停止させ事故を未然に回避する。
そのハイテクは、情報収集能力に長け、頭の回転の速い若者像をほうふつとさせる。
車もかつては野性的なパワーを競ったものだが、昨今は、エコロジーと洗練された自動制御能力がセールスポイントとなっている。
しかし上の世代からすればいささか物足りない印象を持つようだ。
新入社員についても、失敗を恐れずに「あたってくだけろ」の精神でパワー全開、突っ走って欲しいとの声もある。
新入社員の皆さんには、背伸びをせずに、ローリスク・ローリターンの安全運転もいいが、リスクを恐れずに、前向きに挑戦する失敗から学ぶ経験もしてほしい。
なおCMの末尾に表示されるように、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装置は「完全」を保証する装置ではない。
使う人がその特性を十分に考慮し、上手に活用して初めて真価を発揮する。
新入社員も同様に、先を読む能力(高感度センサー)を活かした指導、育成(開発)をすることによって、衝突を回避するだけではなく、適切に加速(スピード自動調節)をしながら、どんな環境でも運転をしていくことができるようになるだろう。
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